和歌山県の資産家で紀州のドン・ファンと呼ばれた会社社長・野崎さんが殺害されて、妻(当時)であった被告人が犯人と疑われて起訴された殺人事件、この裁判の内容が連日のように報道されています。私はこの事件の弁護人でなく、関係者から何か情報を得たわけでもないので、テレビやネットで流れていることしか知りません。ただ報道を知ると、謎が深まるばかりなので雑感を書くことにします。
報道によると、検察は、①犯行時刻と推定される時間帯に被害者宅には、被害者と被告人しかいなかった。②被害者は口から覚せい剤を摂取していて、体内から致死量の2倍以上の覚せい剤が検出された。③被告人は事件の前に覚せい剤の売人から5gの覚せい剤を購入していた。④被告人は、被害者から離婚を求められていて、離婚する前に被害者を殺害して被害者の財産を相続で取得するという犯行動機がある。⑤被害者には自殺する兆候や動機が見当たらず、覚醒剤の使用歴もない。これらの事実等から、検察は、被告人が何らかの方法で口から被害者に覚せい剤を摂取させて殺害したと主張しているようです。
犯行方法について考えてみます。致死量の覚せい剤を食事に混ぜると、とても苦いでしょうから、被害者が気付かずに摂取するとは考えられません。
覚醒剤を摂取させる方法としてはカプセルに入れて何かの薬として、被害者に飲ませるという方法が考えられます。しかし被害者も用心しているでしょうから、不仲になっていた被告人から勧められたとして普段飲んでいないカプセルの薬(量も多いでしょう)を安易に飲むとは考えにくいです。
しかもこの方法の場合、被告人が購入した覚せい剤を使って、覚せい剤が入ったカプセルを作る必要があり、その作業をするための材料、道具、計量器が必要になります。更にその方法を被告人に教える指南役も必要でしょう。しかしこれまでの報道内容だと、このような証拠はないようです。
私は、検察が被告人による完全犯罪が行われたと主張して、覚醒剤を摂取させた方法が解明できないことをフォローしようとしているように感じました。そもそも完全犯罪を計画する犯罪者というキャラクターに被告人は当てはまらないと感じました。
殺害方法だけで考えると、被告人とは別に第三者の男性が被害者宅にいて、その男性がカプセルを用意して、被害者を刃物で脅迫するなどして無理矢理飲ませた可能性というのを思いつきます。
しかし検察は被害者宅に、第三者が侵入した形跡はなく、被害者と被告人しかいなかったので、被告人が被害者を殺害した犯人だと主張しています。
このような検察の主張を前提にすると、第三者の男性の存在は否定されることになります。
誰がどのような方法で被害者を殺害したのか、謎は深まるばかりです。